広告デザイナーといふお仕事について語ろうと思う。

俺の仕事は、毎朝皆が手に取る新聞に折り込まれた広告を作成するデザイナーである。

(厳密に言えば、印刷物全般のデータ作成をするお仕事)

 

仕事における七つ道具

主なビジネスツールは、「パソコン」「Illustrator」「Photoshop」「複合機」「メモ帳」「ペン」「外付けハードディスク」などの七つ道具だ。

特にパソコンやIllustratorPhotoshopは広告を作成する必須アイテムで、重要度の割合の8割くらいを占める。

メモ帳とペンは、営業マンが聞いてきたクライアントの希望要望を又聞きし、メモしておいたり、デザインやコピー(文言)に使えそうなネタを思いついたときにメモっておくために使う。

外付けハードディスクなどは、財産とも言うべき作成物のデータのバックアップに使い、複合機はスキャナーとして使用したり、校正チェックの際に実際にデータを印刷したりするのにフル活用する。

仕事の流れ

仕事には、何でも流れというものがあると思う。デザイナーにもある程度決まった流れというものがあるんだね。

これについては、デザイナーや会社の数だけ「仕事の流れ」の種類があると思う。

正直、うちの場合はかなり特殊な流れで作業をしていると思うので、とりあえず「こんな流れで作業してんのか」と知ってもらえればと。

普通、広告のデザインを進めていくときには、クライアントから依頼があって、たとえば「◯月◯日にこういうイベントがあるから、折込チラシを入れたい」みたいな感じでスタートする。広告チラシに入れる内容は粗方決まっている状態で始まり、デザイナーがそれをベースにレイアウトを考えて、「こんな風なデザインでどうでしょうか?」とクライアントにお伺いを立てて……みたいな流れが一般的ではないかと推測。

しかし、弊社の場合は違う。まったく違う。

 

「イベントするんだけど、イベント決まってないんだよね。考えてきて」

 

何が違うのかといえば、お得意様のとあるクライアントは「とりあえず◯月◯日に◯周年の記念イベントをする。イベント内容も、コンセプトも別に何も決まっていない。レイアウトを勝手に考えて、コピー(文言)も、イベント内容も全部とりあえずそっち(弊社のことね)に任せるから、一応データ作成して持ってきて」という注文が通例だ。

 

要するに「日付以外には何も決まっていない状態」でいきなり丸投げされてくるというわけだ。

 

この段階で、広告に入れる内容というのは、「社名」「住所や電話番号等の情報」「会社の地図」「会社の写真」程度のもので、一番重要とされる「イベント内容」については、とりあえず弊社が考えて、とりあえずデザイン作成して、持っていくというものなのである。(※ちなみにこの段階でIllustratorPhotoshopを駆使した、そのまま出稿しても差し支えのないレベルで「とりあえず」のデータを作成するわけだが、そこに金銭は一切発生しない

 

そうして、営業マンたちが持ち帰ったクライアント様による「無茶振り」を我々デザイナー(我々と言ってもデザイナーは弊社に俺しかいない)が受け取り、レイアウトを考える前にイベント企画のアイデアを振り絞るわけだ。

 

そのクライアント様はわりと特殊な職種というか業種なので、あまり弾けすぎた企画を提案しても社長が「うん」とは言わないし、かと言ってありきたりなものを提案しても「う~ん」と難色を示される。ある意味、一番キツイお仕事ポイントかもしれないな。

 

それで、何とか絞り出した「クライアント様が『いいね!』」と言ってくれるかどうかわからない(仮)付きのイベントのイメージを実際に写真や文言などで、ある程度形作りをしていく。何とか形になりそうだとなったところで、ようやくデザインのスタート地点である「レイアウト(構図のイメージみたいなもの。漫画でいうところのネームみたいな感じだと思ってる)」にとりかかる。

 

仕事は、一旦時間を無駄に消費することから始まる。

レイアウトは基本的にかなり重要なものだと思う。けれど、俺の場合はあまりここにこだわらない。頭の悪い俺は、「こうして、こうなって、こうしよう」「ここがこうだから、こうして、こうするか」などと考えるよりも、感覚。直感勝負。この段階で俺がやっている作業は、広告の作成そのものではないのだ。クライアント様に「とりあえずデータ作ってきてよ」と言われた(仮)のデータに過ぎないのだ。

 

ここで、本気で細かく頑張ってしまうと、いざ本番になったときに心身ともに疲弊して動けなくなってしまうからだ。だから、ここでは完全にラフ。イベントを考えだしてからは、ラフに努める。もちろん、最終的には「お米に文字を書き入れる職人がごとし」の集中力を持って、細かい凝った作業をするわけだけど、ここはあくまでも(仮)データ。

 

ほぼ100%内容が大幅に変わるのがわかっていながら、やっている修行のようなものなのだ。

 

それを1~2日で仕上げ、営業マン2人と共にチェックしていく。それでOKが出たらクライアント様のもとへメールで送ったり、直接出向いてお伺いを立てるのである。

 

そこからそのクライアント様は「ああでもない」「こうでもない」と意見を出し、それを全部メモ。その場で俺が簡素なイラストを描いて、「こんな感じですか?」と訊ねながら進めていくこともある。

 

大抵、最終的にこっちが必死で考えたイベントは予算やら手間やらの都合で、まったく違うものに変わってしまう。つまり、(仮)で作成してはめ込んでいた、俺の努力の結晶である仮のイベントのパーツ作成は水泡と化すわけだ。1からやり直しである。

 

こんな流れを繰り返し、結局「どこかで見たことのある普通のイベント」に落ち着き、本スタートを切る。俺の仕事は、まず時間を無駄に消費することからはじまるのだ。

 

クライアント=天真爛漫な気まぐれ天使ちゃん

 

だが、ここからも天真爛漫なクライアント様は自由奔放なご意見をのたまい、我々を右往左往させてくださる。急にいろいろと提案くださるようになるのだが、A案とB案とC案のどれもがほぼ同じもので、いったい何がどう違うのかよくわからない提案ばかりで、これまた「何でこれを入れたいんだろう」という内容が大半を占める。

 

もうすでに固まりつつあった全体像を破壊するかの如き、珍案を出してくれることもある。

 

また、「シックなイメージで」と言うご依頼のもと進めていたのが、完成間近で「もっとポップな感じで」に変更する気まぐれ天使ちゃんを発揮してくださることもしょっちゅうだ。そんなとき、俺は揺れ動く◯◯の波動を抑えつつ、「相手は気まぐれ天使ちゃん。可愛い天真爛漫な天使なのだ」と脳内をコントロールすることにしている。

 

そして、データ出稿へ……。

メールのやり取りを含むと、1度の折り込みチラシに費やす打ち合わせの回数は15度以上に及ぶ。膨大な打ち合わせを繰り返し、直しまくって、ようやく最終OKが出ると、出稿の準備にとりかかる。

 

「画像のリンクは大丈夫か(画像の抜けはないか)」

「誤字脱字は大丈夫か」

「アウトラインはかかっているか(※開くパソコンによってインストールされているフォントが異なるため、文字化けを防ぐ意味で施すちょいとした加工のこと)」

2重、3重の厳重なるチェックの末に、ようやくデータの出稿にたどり着く。

あとは、印刷所にお任せするわけだが、そこで仕事は終わらない。

印刷の仕上がりを確認したり、折り込みの確認をしたり、とにかく確認作業が続くのだ。確認、確認、雨、確認。

そんなこんなで皆さんのもとへチラシが届くのである。

 

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