高校野球におけるバックネット裏でのもうひとつの野球

 

高校野球の地方大会というと、よほどのスター選手でもいない限りガラガラに空いている。

野球好きとしては寂しいけど、観客が少ないことで面白い体験が出来ることもあるのでそれについて書いてみようと思う。

 

他校の偵察部隊の動きが見られる。

これが一番おもしろかった体験だ。

ガラガラの球場で行われる試合は、簡単にバックネット裏の席に座ることが出来る。

そこには大抵、その試合の勝者と次に戦うチームの偵察部隊が陣取っているので、俺は彼らの真後ろの席に座ることに決めている。

野球帽を目深にかぶった偵察部隊の子たちは、それぞれ「スピードガン」「スコアブック」「ビデオカメラ」「メモ帳」などを持っていて、グラウンドで戦っているライバル校の選手たちの一挙一動を細かく記録している。

試合中、ずっと熱心にメモを取っている子がいたのでさりげなく覗き込むと、「コース」「球速」「球種」などを几帳面な文字で記録しているのが見えた。それが試合中ずっと続くのだから、相当な集中力だと思う。

「スピードガン」を近くで見ることなんかあまりない経験だったので、俺は投手が一球投げ込むたびに視線をスピードガンの表示に移した。これで両チームの投手がどれほどのスピードで球を投げているのかがわかる。具体的な球種にしても、目の前にいるメモ係を覗き込めば何を投げたのかがわかるので、より一層野球観戦が面白くなるのだ。

比較的楽そうに見えたのは、「ビデオカメラ」の係。カメラをちょうどいいポジションにセッティングし、RECボタンを押した後はおにぎりを食ったり、お茶を飲んだりしながら普通に野球観戦していた。その隣ではメモ係の子が国会での速記のような勢いでひたすらにペンを走らせている。

 

偵察部隊の嘆きや雑談が聞ける。

盗み聞きするわけではないが、野球部員の声は大きい。ひそひそ話のつもりかもしれないが、それでも一般人の通常のトーンで聴こえてくる。

「あーあ、試合出たいよなあ」「仕方ないよ。◯◯さんたちがいる間は……」「俺、こんなことするために野球部入ったんじゃないのになあ」といった嘆き。

また、まったく野球とは関係ない「昨日観たテレビ」の話「付き合いたての彼女とのノロケ話」なども聴こえてくる。

その間も、メモ係はひと言も喋らずメモを取り続けている。終始真剣そのもの。

「おい、お前らもっと野球がんばれよ!」とおせっかいおじさんは言いたくなるが、それをグッとこらえてグラウンドを見つめる。

とは言え、普段の観戦では選手としての高校球児しか観ていないので、こんなふうに学生っぽいところの球児たちを知るのも新鮮で面白い。

これもガラガラ観戦の醍醐味のひとつだ。

 

試合直後のエース襲来

 

別球場で試合をしていたと思われる、偵察部隊と同じユニフォームを着た汗だくの選手がやってきた。土に汚れたユニフォームと、背番号「1」が眩しい。

左投手なのだろう。彼の左肩にはアイシングサポーターが装備されていた。

彼は、偵察部隊に近づいてくるなり、「どんな感じ?」と声をかけた。偵察部隊は緊張した面持ちで試合中記録していた内容をエースに説明していた。エースはそれを頷きながら聞くと、「ふーん。よくわからねえな。俺も観てくわ」と偵察部隊たちの横にどっかりと腰を下ろした。そして、彼は腕組みをして、試合終了まで黙ったまま試合を見つめていた。

エースが姿を現したことで、偵察部隊は皆、黙々と仕事に取り組んでいた。(ビデオカメラ係はすることがなくて困ったのか、頻繁にカメラの配置を変えたり、エースと同じように腕組みをして時折頷いたりしていた)

 

まとめ

結局、この日の試合はほとんど偵察部隊の観察がメインになった。

試合内容はほとんど記憶に無いけど、面白い情報を仕入れられたのは大きなプラスだと思う。

年間を通して、規模の大小を問わなければ野球の試合はたくさん行われているので、一度「偵察部隊ウォッチング」を楽しんでみてはいかがだろうか。

 

 

 

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