田舎者、葛藤して不安になる!
これは凄いところに来てしまった――。
そして、
俺がここにいていいのだろうか――。
そんな思いが渦を巻き始めていた。正直言って、ファンとしての年季が圧倒的に違うのだ。ビートたけしのオールナイトニッポンが開始したのが1981年だから、俺は生まれてすらいない。何だったら親父とお袋が出会いもしてなかった頃の話なのである。
だから、俺は何も知らないのだ。「フライデー事件」も「オートバイ事故」も「たけしの挑戦状」も何もかも。
諸先輩方に教えられて初めて「えっ、歌を歌っていたの!?」と驚いたくらいだった。
おいおい、場違いじゃねえか。俺、浮いてるんじゃないのか?
募る不安。もちろん、予習はしてきた。
名作「浅草キッド」も「金言集」も、他にもたくさん読んだし、Twitterでお世話になっている方々から色々と教わったし、CDアルバムだって買って聴き込んだ。真偽は定かではないが一応Wikipediaもひと通りもふた通りも読んだ。映画も観た。
しかし、所詮付け焼き刃だ。密度の濃い本物の前ではまるで無力なのだ。軟弱で、すぐに刃こぼれするようなものでしかない。自身の薄っぺらさを改めて痛感した。
目眩を起こしながら、席に着く。内心びくびく。ビビりまくり。
元来人見知りなので、極力誰とも目を合わさないように努め、出来る限り無表情で会場内を何ともなく見回してみたり、何も考えていないのに唸ってみたりしてライブの開始を待った。正直なところ、この段階では川柳のことを完璧に忘れていた。何も始まっていないのに圧倒されていたのだ。
そして、心の拠り所であるTwitterに目をやると、日頃仲良くしていただいているフォロワーさん方からメッセージなどが届いていることに気づく。
見つけ出していただき、感動のご対面。様々なお土産をいただき恐縮につぐ恐縮。感謝感激である。
ライブ開始までは、皆で写真を撮ったり、スタンド花を眺めたり、友達が増えたり、買ったグッズをガン見したりして過ごした。しばらくすると開場となり、いただいたチケットが示すとおりの席につく。最前列。こんな距離でライブが観られるのかとしばし呆然。
川柳グランドチャンピオン決勝進出者7名が並んで座っていたわけだが、皆、実に穏やかな表情をしており、とても優しい方々で心底ほっとした。多分、「この人があの川柳考えた人だよ」と言うと、「まじで!?」とリアクションされること間違い無しのナイスガイの集まりだった。もちろん、俺も含めてと言っておこう。