地下室で掃除をしていたら、変な気配がした話。
専門学生の頃の話だ。
オープンキャンパスに訪れた高校生たちを案内するスタッフとして学校に雇われていた。でも、その日は俺が在籍する学科を希望する学生はひとりもおらず、教師から「仕方ないから、◯◯さんと一緒に地下倉庫の片付けをしてくれ」と言われた。
その学校の地下倉庫には膨大な数の書類やら、各学科の使われなくなった機材などが大量に放置されているんだけど、俺と◯◯さんはたったふたりでそこの片付けを命じられた。
1時間ほどふたりで汗だくになりながら片付けをしていると、突然エレベータが降りてきて開いた。誰かが降りてくる気配はしたものの、振り返っても誰もいない。誰かがボタンを押し間違えたんだなと思って、ふたたび作業。
変な影を見ちゃった
さらに半時間後、◯◯さんと「そろそろ良いだろう」と区切りをつけてエレベータを振り返った。すると、ちょうど良いところにエレベータがやってきて、誰かが入っていく影を見た。
やっぱり誰か降りてきてたんだ。そう思った。
「あっ、すみません。俺たちも乗ります」
そう言って◯◯ちゃんと一緒にエレベータに飛び込むと、そこには誰もいなかった。
(あれ? 誰か乗ったような気がしたけど……気のせいだったかな)
完全に気のせいだと思っていたんだけど、ふと隣にいた◯◯ちゃんを見ると、顔色が悪い。
「どうしたの? 疲れた?」
「……今、絶対誰か乗ったよね?」
「えっ?」
そうか、◯◯ちゃんも誰かが乗るのを見たんだ。
「う、うん。見た。絶対誰か乗ったよ」
しばらく沈黙。
「ごめん」
いきなり◯◯ちゃんが謝ってきた。意味がわからないので、理由を訊ねると、どうも◯◯ちゃんは霊感が強いらしく、よくそういう「何だかよくわからないもの」を見てしまうのだそうで、一緒にいる人を巻き添えにしてしまうことが多々あるんだそうだ。
「大丈夫。俺、鈍感だから」
そんなやり取りをして、しばらく経ったある日、自宅のマンションで同じような影がエレベータに乗り込むのを見た。結局のところ、それが霊的な何かなのかはわからない。
別に何か被害をうけたわけでもなく、ただ俺の前にエレベータに乗り込むだけだった。
もしかしたら、俺が乗り込む前にエレベータが違う回に行ってしまわないようにしてくれる親切な何かなのかもしれないなと思うことで、怖くないようにしている。