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あぶさんになった男 永渕洋三 読書録

投稿日:2017年4月12日 更新日:

 

 

飲む、打つ、投げる。

 

あぶさんの核となる部分のモチーフとなった永渕洋三氏の現役時代を描いたノンフィクション。

 

気分転換のつもりで読み始めたら止まらずに全部読んじゃった。あぶさんファン必読のエピソードが満載だった。読んでい て、「あっ、この話はあぶさんにも出てきたぞ!」となると、また次が気になっていく。どんどんどんどん引き込まれて、気づけばあとがきだった。

 

また帯に書かれたコピーが素晴らしい。

 

「飲む、打つ、投げる」

 

 

飲み屋のツケを払うためにプロ入り

入団の経緯も社会人野球時代に飲み屋のツケがたまりすぎて、支払えなくなったのでプロ入りしたという。これじゃそのままあぶさんだ。その後の活躍ぶりもあ ぶさんをイメージさせるものだった。打席に入るまではぶるぶると震えているのに、バットを構えて投手を見据えると震えはぴたりと止まる。そのままあぶさんだ。

 

永渕の酒の強さは親父さん譲りだったようで、そこらへんはお母さん譲りの酒豪だったといわれる稲尾和久ともよく似ていると思った。飲み比べで3升以上空 け、ビールを20本以上空け、泥酔状態で試合に出る永渕はいかにも昭和の豪傑選手という感じだ。

 

しかも、入団当初は投手の代打として登場し、そのまま次の回からマウンドに立って、切りのいいところでライトに回って試合に出続けるという変わったスタイルで出場していたというから驚きだ。さすがは三原監督。采配の仕方が並ではない。

 

 

「可愛げのないやつだ」byノムさん

 

メインの話ではないが、作中にとても印象に残る三原監督のコメントがあった。

 

「(斬新な采配に対して批判が募ることに対して)一方的な一つの見方でしかみようとしない(略)」

 

いつの時代も何か新しいことに挑戦した人は「出る杭」となって叩かれる。成功すれば賞賛に変わるし、失敗すれば罵倒されたり、嘲笑されたりする。常識の範 囲内という安全圏から出ようとしない我々に対する、痛烈な苦言コメントに痺れた。その後、三原監督と永渕は野次を歓声に変えてみせたのだ。

 

また野村克也と鶴岡一人監督がまったく同じ印象を永渕に抱いていたというエピソードも面白い。

 

「可愛げのないやつだ」

 

南海ホークスを打ち崩しておきながら、喜びをあらわにしない永渕に対するふたりのコメントだ。(ちなみに永渕は瞬間的な集中力が凄まじかったため、野村克也のささやき戦術が一切通用しないひとりでもあった)

 

読み終わって思うのは、「あぶさん、読みてえ」だった。

 

これ以上書くとネタバレが続いてしまうので、この辺で終わらせておこう。重要な部分は省略したはずだから、万が一これを未読の方が読んでしまっても大丈夫なはず。あぶさん好きならぜひとも読んでいただきたい1冊である。オススメだよ。

 

 

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