「あのー、こちらで珈琲は買えますか?」
そう聞いてた。店先に掲げてるメニューに書いてあるのに、変わったことを言うなあと思った。
多分おばあさんも同じように思ったんだろうね。一瞬「はあ?」みたいな表情になりつつも、にこやかに、
「あー、ありますよ」
と答えた。
俺は「何だ、このやり取り」と思いながらポーク丼をバクバク食べてた。
すると、男の人が
「えっと、こちらで使ってる(珈琲)豆を売ってるんでしょうか?」
と質問を追加してきたんだよ。なぜか飯屋に珈琲豆買いに来たらしい。
俺も驚いたけど、おばあさんはもっと驚いた様子で「豆は売ってません」と返してた。
「あー、そっすかー」と言い残すと、男の人は去っていった。
多分だけど、その店は喫茶店みたいな本格的な珈琲を出してるわけじゃないと思うんだよね。店の感じ的にお食事どころだし、食後の1杯感覚だと思うんだ。
飲んでないから何とも言えないけど、多分インスタント、良くて市販の豆だと思うのね。おばあさんとしても、先客の俺の手前、「あー○○っていう市販の豆ですよ」「うちはインスタントです」とも言えずもどかしかったんじゃないかな。
それよりも、店の外観も「飯を食べるとこだよ!」感でいっぱいなところだから、何でここで珈琲豆が買えると思ったのだろう。それが一番の謎だ。
これが旨い飯を食いながら、
俺が巻き込まれた、微妙に不思議でちょびっとだけモヤッとした体験である。
意外と文字数多くなったので続く。