そんなせわしない大将と、せわしないお客さんを眺めていると、なんだか面白く、なんだか嬉しくなるのを感じた。
店や大将の事情を理解した常連客たちが、自主的にそれに協力する。その姿を新規の客(たとえば俺)が見て、「なるほど、こういうシステムか」と真似る。それを見ていた別のお客がさらに真似ていく。こうした一連の流れが、この立春軒を支えているのだろうと思ったからかもしれない。
「ラーメンのどんぶりは大将の近くに持ってけばいいんだな。それじゃ会計のタイミングはどうするんだろうか」などと先に食べ終えた客の動向を見ながら過ごしていると、お待ちかねのラーメンがやってきた。