道の駅で買い物でもして時間をつぶしてみるかと思い、物色。ドイツビールやすだちサイダーなどを購入し、いったん車に戻った。(鳴門市は、板東捕虜収容所があった歴史から、ドイツとの関りが深い地域なのである。)

良く冷えたサイダーを飲みながら、時計を見る。まだ9時25分だった。
ふたたび車を出て、周辺をうろうろ。
せっかく探索するのだから、とスマホで気になったところを撮影し、所感めいたものをメモした。完全なる気まぐれだった。だが、それが後々記事を書くための礎となるのだから、人生何がどう活きてくるのかわからない。
そのうちに9時半になったが、なぜかイートインスペースはクローズドの札がかかったままだった。
開くまでもう少し時間をつぶすかと辺りを見回す。だが、もう辺りは何となく歩き尽くしていた。なので、道の駅から歩いてすぐのドイツ館にも行ってみることにした。ドイツ館は9時半に開くと調べはついていたのである。

以前の記事では、「撮影が禁止なので~」云々と書き記しただけで細かく触れていなかった。だが、ドイツ館での、妙に残っているエピソードがあるので、この機会に記しておこう。
何を観ていたときだったか、すぐそばで母子が楽し気に会話をしていたのが聞こえてきた。ふたりは小声で話していたが、距離が近かったのと、あたりが静かだったことなどが重なり、良く聞こえた。
「ねえ、おかあさんは何歳? 41歳?」
「んーん、おかあさんは36歳」
「えー、36歳は41歳?」
「ちがう。36歳は36歳」
「41歳がいい」
なんてことないやり取りだったが、これが妙に記憶に残っている。これがなんだと言われても、なんでもない。ただ忘れられないやり取りで、妙におかしかったのを覚えている。あれから7年。おかあさんは、43歳のはず。その子が「いい」といった41歳は仲良くお祝いできただろうか。
そのよくわからないけど、微笑ましいやり取りが7年越しに思い出せるわけだが、それだけで入場料250円がお得だと考えるのは、おかしいかもしれない。でも、個人的にはこういう何てことないエピソードこそが、俺の記事の基本なので、やっぱりお得なんだろう。
退屈で渇き切っていた俺を潤した母子には、7年越しに深い感謝を伝えたい。
そうこうしているうちに時間は進み、9時40分くらいになっていた。「もう開いているかな。もう一度道の駅にいってみよう」と思い、ドイツ館を出た。
