※この記事は過去に運営していたブログに掲載していたものです。
よって不自然でつながりのない部分があるかもしれませんが、内容そのものには問題はありません。
最近、BSで映画やってたのでリライトしてみました。
マネー・ボール読書録①
「マネー・ボール」というメジャーリーグ・アスレチックスのジェネラルマネジャー、ビリー・ジーンの手腕ぶりを描いたノンフィクションの本だ。野球が大好きで、読書も好き。おまけにビジネス書を読むのも嫌いではない俺からすると、どうして今まで読んでいなかったのか、自分でも不思議なくらいうってつけの一冊である。
さっき届いて、読み始めたばかりなので第2章までしか読めていないが、面白い。
未読の方のために、主なネタバレになるようなところは伏せておくが、ヤンキースの3分の1程度の総年俸というアスレチックスのジェネラルマネジャーとなったビリーが、「資本による大掛かりな改革が望めないのなら」と「金に依存しない方法」として、現場スカウトたちをはじめとする人々の野球観そのものの根底を見直し始める話だ。
たとえば、選手の足の速さの市場価値を再検討したり、中級のメジャーリーガーと上級の3A選手の本質的な違いは何かという詳細の見直しである。
この固定化されつつあった、物の見かたに囚われず、多角的に見直していくビリーの手腕が面白い。このあたりは、ノムさんがよく口にしている「固定観念は悪、先入観は罪」という考え方に通ずるものがあるんじゃないかな。
また、まえがきにあったチームの1勝を増やすのに費やした計算というのも興味深いデータだった。
オリオールズやレンジャーズが1勝を増やすのに300万ドル使ったのに対して、アスレチックスは50万ドルにとどめているというものだ。
工夫、見直し、分析でこれだけ削れるということなのだろうか。これは規模を無視すれば、どんな仕事にも置き換えて考えることができるはず。弊社でも取り入れたいものだ。
また2章までに出てくる名前で「おっ」となったのは、ケビン・ユーキリスの名前があがったときだ。10年間メジャーリーグでバリバリ活躍して、最後は楽天イーグルスで引退したプロ野球ファンにも馴染み深い選手だね。マネー・ボールの中では「四球のギリシャ神」と呼ばれている。
うーん。面白いね。限られた資金の中で、勝つために必要なだけの優秀な兵士をかき集め、マネジメントしていく創意工夫。
先を読んで、無駄のない一手を打っていく。まるで将棋のプロのようで格好良い。
マネー・ボール読書録②
第3章にはいると、物語はビリーの現役時代へと場面が戻る。例によってネタバレは回避したいので詳細は省くけれど、ビリーの本質と彼以外のすべての人々が下す彼への評価との隔たりがあまりにも大きく、葛藤するビリーの心の揺れを現す描写が続く。読み進めていくと、ふと太宰治の短編小説「トカトントン」が思い浮かんだ。
たしか20代半ばの青年が主人公の物語で、青年がやる気を起こして頑張ろうとするたびに「トカトントン」という不思議な音が聞こえてきて、やる気をしぼませてしまうという話だったように思う。
別にビリーがそんな奇怪な音を聞いたといっているわけじゃない。だが、若き日の彼が「打てない」葛藤から抜け出そうと工夫をするたびに、何かしらやる気を 奪うような出来事(もっとも本人の不注意によるミスなどだが)が起こって、だんだんとプレイヤーとしての熱を失っていくのが、俺にその小説のような印象を 与えたのかもしれない。
4章になると、ある男にスポットライトが当たる。男の名はビル・ジェイムズ。彼は自費出版で野球に関する持論を展開するのだが、その内容が実に興味深い。 エラーの定義についての考察や、マイク・シュミットがカブス戦にしか出場しなかったらどんな成績になるかなどといった、実に変わった野球観を持っていたからだ。ジェイムズの初の出版物はわずか75部しか売れなかったが、それでも彼は大喜び。さらにどんどんと書き、次々に出版していく。そのたびに売れ行きは 少しずつ上がっていったという。
このジェイムズの野球の観方は本当に参考になると思った。想像力を練って、野球をありとあらゆる方向から眺める感じは俺が見習うべき野球観戦スタイルそのものだった。興味の無い人からすれば「バカバカしい」と一蹴されてしまいそうなへんてこなテーマを、無理やりこじ開け、広げていくジェイムズの野球への情熱には、ある意味でビリー以上に共感させられた気がする。
何だか4章は特に影響を受けそうなところだなあ。読んでいて、「これだ!」感がめちゃくちゃ強くなった気がする。野球に対して異常ともいえる情熱を注ぐ男 のエピソードはモチベーションを著しく上げてくれるようだ。
読書録は読み終わるまでつづきます。
マネー・ボール読書録③
読み進めてはいるものの、依然としてジェイムズのエピソードが続いている。
しかし、俺的にはこのエピソードはかなり心地よくてたまらない。当時の常識に縛 られ、本当の意味での自由を見失い、本当の楽しみや喜びを見失ったまま、それにも気づかない大勢の人々の目を覚まさせていくジェイムスは実に格好いい。
世の中の大半は多数決だ。それが民主主義というのなら否定はしない。しないが、それが「面白いのか」「面白くないのか」という二択に迫った場合、答えは大 きく変わってくるに違いない。圧倒的多数が「常識だ」という事柄でさえ、判断基準を変えればたちまち変貌を遂げていく。これがこの章の肝だと思う。
「一般的に常識とされているから」という固定観念がもたらすことは、意識の外側で大きな損失が発生しているのにそれに気づくことすら出来ない不運であることを改 めて痛感した。
大勢が追いかける常識が本当に正しいのかどうかを、一旦立ち止まって冷静に吟味できる人こそが本質にたどり着くことが出来、それが出来なければ一生本質を垣間見ることすら出来ないと知った。これはその他のことにも当てはまるだろうし、それに気がつかなければならないことだと思った。
うーん、このマネー・ボールなんて読み応えがあって、面白いんだろう。勢いあまって野球抄もアマゾンで買っちゃった。全部英語で読めそうもないのに。。。辞書片手に頑張って読んでみようっと。早く届かないかなあ。それまでにマネー・ボールを読破しなくては!
マネー・ボール読書録④
コツコツと読んでいる。
ジェイムズのエピソードの次に俺がはまったのは、スコット・ハッテバーグのエピソードだ。
四球を選ぶ重要性を知っていて、ボールをバットに当てるのが上手く、研究熱心。
そして、ボールの見極めやカットなどでしぶとく粘れるバッティング。スラッガータイプではないものの、対戦投手としては非常に厄介な存在だったハッテバーグ。
実に俺好みの選手だ。
また「打てる!」というポイントだけではなく、「打てない!」という自分の弱点ポイントもきちんと把握しているのはかなり魅力的。
大好きなアンドリュー・ジョーンズと はタイプは違うが、四球をよく選ぶところ(選球眼の良さ)はとても似ている。現在ハッテバーグの映像などを探索中だ。何しろ文面でしか知らない選手だから、 どんなフォームで構えて、どんな風な表情で投手を見ているのか、どんな顔をしているのか、どんな体型なのかまるで知らないのだ。
それにしてもマネー・ボールには個性的な選手が次々に出てくる。
マネー・ボールを読むきっかけとなったチャド・ブラッドフォードが本の終盤に なってようやく登場してきた。
お守り代わりに偶然見つけた石ころをポケットに入れていたり、とにかく目立つのを嫌がったり、サブマリン的な投法ゆえに変化球を投げようとして指を地面に擦ったり、ゲン担ぎなのか試合が始まったら奥さんに球場から出るように指示したり、ブルペンではいつも同じ球を同じ数だけ投げたりしたそうだ。
続きが非常に楽しみだ。
マネー・ボール読書録⑤
ちまちまと読み進めて、そろそろ終わりが見えてきた。少し寂しい気がする。
思いのほかチャドのエピソードにページが割かれていて、個人的にはとても嬉しい気持ちになった。なぜチャドがあの独特なフォームになったのか。そのルーツであったり、子供の頃の作文であったり、お父さんの境遇であったり、チャドだけでとてもドラマチックな展開でかなり読み応えがあったなあ。
他の選手の項目でもそうだけど、貧乏球団であるからこそ多面的な観点を持って選手を見たアスレチックス。
この感覚は俺自身もぜひとも持ちたいものだと思っ た。より野球を面白く観るためにも、より成長していくためにも大切なことのような気がする。創意工夫。大きな流れに乗るばかりではなく、違う見方で自分で 新たな流れを見出すことがひとつ重要なことなのではないかと思った。
それまでの常識だったあらゆることが、すべて正しいとは限らないことも学んだ。ジェイムズやボロスという野球のデータ分析に熱心な男たちが、それぞれ、こ れまでメジャーリーグという組織ほぼ全体が信じ込んでいた常識に、疑問を抱き、自分の力で徹底的に研究し、具体的な理由を掲げて「正しくない」と公表する描写があるのだが、「なるほど」と目から鱗の連続だった。
常識をなぞる前に、そのなぞろうとしている常識がどういう根拠で正しいとされているのかを知ろうとする気構えが重要なのではないかと思った。それを怠ることで、何か重大なものを見落とすおそれがあるような気がしてならなくなった。読めば読むほど考えさせられるなあ。
マネー・ボール読書録ラスト
ちんたら読んでたら結構時間かかってしまった。
ラストは何となくビリーのキャラクターっぽくて良かったかなと思った。
それにしてもこの本を一冊読んだだけで、かなり沢山の選手を知ることになった。
知って、調べるきっかけになり、読了後にもう一度カードを整理してみたのだ が、「あっ、この選手は○○の場面に名前が出てきたぞ!」とか「この選手は結構期待されてたのに、気持ちの問題ですぐに放出されたんだったな」とかそういう再確認するのが楽しくなった。選手を知ることで、野球そのものをより楽しめるのでマネー・ボールを読んで本当に良かったと思う。
学んだことは、「物事は多角的に見ることで本質が見えるかも」ということだ。視野が狭いと、周囲の環境なんかに振り回されて、何か問題にぶつかったときに 乗り越えられないので、ものの見方は気をつけたいと思った。それだけでも大きな収穫だ。