「この前、1番札所に行ったから、最後の88番札所に行けばオセロ方式で全部行ったことになるんじゃね?」
それは、ちょっとした思いつきと言うか気まぐれのつもりだった。
信仰心の薄い、浅慮で罰当たりな俺はこの文章をブログに書きたいが為だけに「88番札所 大窪寺」に向かっていた。
この段階で詳しい人、もしくは香川県民なら「あれ?」と何かに気がついたかもしれない。……そう、大窪寺は香川県にあるお寺なのである。
しかし、この罰当たりな上に不勉強な男は何も知らず、呑気に「情熱の薔薇」を口ずさみながらハンドルを握っていた。
じょ~ね~つの
まっかなば~ら~を~
そこからは実に不思議なんだけど、途中に絶対にあったはずの「香川県」の標識を見落とし、また香川ナンバーの車とすれ違うことなく大窪寺に到着した。(山越えるルートだったからかな)
まだ自分が香川県にいるなんて思ってもいない間抜けな男は、駐車場に車をおき、多くの人たちでにぎわう寺へと続く坂道を歩いた。
何も知らないで、写真を撮っているときだった。何気なく撮ってみた1枚の写真に、完璧すぎるネタバレが写りこんだ。
「四国霊場めぐり」の説明書きの最後に「香川県」と書かれているではないか。
しかし、この罰当たりな上に不勉強な、それに加えて注意散漫な間抜け男はまたもや、それを見落とした。
「何かむずかしいことを書いてあるや」
到底30歳の感想とは思えないことを呟きながら、男は寺へと上がっていく。
香川県にいることには気がつかない男だが、お寺の見事さには感嘆していた。
「何かに似てる気がするなあ」としばらく眺めてるうちに思い出した。
仏陀石だ。まあ、実際に写真を並べてみたら、そんなに似てないんだけども笑
けど、よく考えてみれば、大窪寺にしろ仏陀石にしろ弘法大師と深いつながりがあるわけだろうから、似てても不思議じゃないか。(あんまり似てなかったけど)
ちなみに仏陀石の話はこちらから。
原爆の火
説明によれば、この火は広島県に原爆が落とされたときのものらしい。大窪寺に1988年10月24日に持ち込まれた、と書かれている。
罰当たりな男といえども、それに関しては真面目に衝撃を受けて、しばらくその火を見上げて眺めていた。
と言うのも、広島の原爆ドームにも行ったことがあったし、長崎では被爆された方から話を伺ったこともあり、バカなりに男も原爆や戦争について思うことがあったからである。
このあたりになると、男は下らない気まぐれで訪れたことを悔いはじめ、また同時に「来て良かったかな」とも思い始めていた。もっとも、自分がまだ徳島県にいると思い込んでいるため、
「よし、これは是非ともブログに書いて広く知らしめよう。徳島県にはこんなところがあるよって書くぞ~」
と非常に重要な部分のピントがずれているのがとても残念である。
それからも男は自分が香川県にいると気が付くこともなく、大窪寺周辺をひたすらに歩いた。
巨大なわらじに喜んだり、
ガンツに出てきそうな像を見上げたり、
鐘を鳴らしてみたいと思ったり、
とにかく徳島県にいると勘違いしたまま大窪寺を満喫した間抜けな男は、大満足で帰路につくのであった。
ちなみに鈍い男が「実は香川県におったんや!」と気が付くのは、帰宅後記事を書いているときに軽くググったときである。
それもこれも罰当たりな思いつきで行動した男を戒める何かなのかもしれない、とはまったく思わない懲りない男だった。
おーしまい。