マネー・ボール読書録⑤
ちまちまと読み進めて、そろそろ終わりが見えてきた。少し寂しい気がする。
思いのほかチャドのエピソードにページが割かれていて、個人的にはとても嬉しい気持ちになった。なぜチャドがあの独特なフォームになったのか。そのルーツであったり、子供の頃の作文であったり、お父さんの境遇であったり、チャドだけでとてもドラマチックな展開でかなり読み応えがあったなあ。
他の選手の項目でもそうだけど、貧乏球団であるからこそ多面的な観点を持って選手を見たアスレチックス。
この感覚は俺自身もぜひとも持ちたいものだと思っ た。より野球を面白く観るためにも、より成長していくためにも大切なことのような気がする。創意工夫。大きな流れに乗るばかりではなく、違う見方で自分で 新たな流れを見出すことがひとつ重要なことなのではないかと思った。
それまでの常識だったあらゆることが、すべて正しいとは限らないことも学んだ。ジェイムズやボロスという野球のデータ分析に熱心な男たちが、それぞれ、こ れまでメジャーリーグという組織ほぼ全体が信じ込んでいた常識に、疑問を抱き、自分の力で徹底的に研究し、具体的な理由を掲げて「正しくない」と公表する描写があるのだが、「なるほど」と目から鱗の連続だった。
常識をなぞる前に、そのなぞろうとしている常識がどういう根拠で正しいとされているのかを知ろうとする気構えが重要なのではないかと思った。それを怠ることで、何か重大なものを見落とすおそれがあるような気がしてならなくなった。読めば読むほど考えさせられるなあ。