ネルドリップコーヒーで大人の階段登る

しばらくすると、マスターが「お待たせしました。ネルドリップコーヒーです」と言って持ってきてくれた。
その際に「エチオピア」が云々と言っていたので、そのあたりのやつなのだろう。俺はコーヒーが苦手でほとんど呑まないから詳しくないけど、「ほほう、なるほど」と訳知り顔で頷いておいた。
とりあえず31歳になったし、そろそろ「ひとりでコーシーでも飲める大人になっとくか」と挑戦したのだ。お店でコーヒーを頼むのは、多分これが初めてのことだった。
ふむ、砂糖もクリームもない、か……。

ここだけの話、営業マン時代、よくお客さんにコーヒーを出してもらう際には俺だけ毎回「甘いの好きでしたよね」とスティックシュガー3本と大量のクリームが用意される扱いだったため、完全なるブラックは初体験に近かった。
男は度胸。四の五の言わずに啜ってみるか……。ズズッ。
苦い。やはり苦い。が、何だろう。苦味だけじゃない。風味が芳ばしく感じるのは風邪気味だからか? とにかく嫌じゃない。もしかすると、俺は今まで好きじゃないタイプのコーヒーしか飲んできてなかっただけかもしれない。
俺、このコーヒーだったら飲めるかも。
生まれてはじめてコーヒーが旨いと思った瞬間である。
ところで、ネルドリップって何だろう。

「ネル」とは、手触りが柔らかく起毛している織物「フランネル」のことで、「ネルシャツ」の「ネル」と同じものを指します。このネルで作られた布製フィルターを使う抽出方法を、ネルドリップと言います。ペーパーよりフィルターの目が粗く、コーヒーの微粒子が布フィルターから抜け落ちるので、舌触りの滑らかなコーヒーになると言われています。
UCCのネルドリップの項目より
調べてみたらば、こういうことらしい。
へえ、よくわからんけど、これなら好きかも。特にここのコーヒーはかなりこだわってるらしいからね。

何でも自家焙煎の珈琲店だそうだし。(まあ、だからこそ、一応礼儀としてコーヒーを試しに注文してみたんだけどね)
31歳にして大人の階段を1、2段登ったとき、本日のメインディッシュが登場した。
