君は知っているか?
濡れた落ち葉、濡れた岩場と安物のトレッキングシューズの相性が絶望的に悪いということ。そして、その危険性を。
俺の愛用していた運動靴が、山犬嶽への冒険で完全に破損したのは前に書いた通りだが、今回の剣山遊びに間に合わせるために急ごしらえ的に入手した安いトレッキングシューズを履いていった。
そいつは防水性や衝撃の吸収などには十分役立ってくれていたのだが、なにぶん靴底のグリップがまるで効かず、つるんつるん滑るという塩梅。
そういうシューズで山に挑むのは大変危険だが、もう来てしまったものは仕方ない。こういうときは体幹を意識しつつ、足の裏の感覚を研ぎ澄まし、体重のかけ方に注意し、さらに足元を注意深く観察しながら進めば、ある程度は対応できる。
これから山で遊ぼう、冒険しようと思っている君。靴だけはケチっちゃいけないよ。
それはさておき、俺も、弟マーも足元を滑らせながら、何度か「やべぇ!」と肝を冷やしつつ第3の目的地を目指して進んでいた。
ちなみに、我々第3の目的とは、
これまで3度の剣山挑戦で一度もたどり着けなかった、行場コースの「鎖場」だった。
行場コース 鎖場を目指せ!
鎖場……。
山岳信仰の修行のアレで吊るされている鎖を登っていけるアレがあるらしいのだが、どういうわけか毎回見逃してしまって一度もお目にかかれていないのだ。
なので、今回こそは絶対に見つけ出し、何が何でも挑戦してやろうと思っていた。(行場コース自体は過去に2度歩き回っている)
とくに去年、初めて徳嶋ブラザーズとして挑戦した際には、何を間違ったか変なルートに出てしまい、謎の超絶斜度地獄を味わう羽目になり、したくもないショートカットをしてしまい、目的地である鎖場を通り過ぎてしまったっぽいのだ。
というわけで今回はしっかり途中にあるヒントを着実に得ながら、冷静に進んでいくことにした。
とりあえず尾根道コースを下り、一旦「刀掛の松」のところまでやってきた。
そして、用心深くマップを確認しながら「行場コース」に進んでいく。
不動の岩屋に寄り道
鎖場へ向かう途中、不動の岩屋という前回、前々回にも紹介済みの湧き水スポットに寄り道していくことに。マーは一度いっているので外に残し、俺だけ再び降りていくことにした。
なぜなら今回はGoProを持っていたので、それで軽く動画を撮っておこうと思ったからである。
これでよし。
ふたたびマーと合流し、鎖場を目指して歩き続ける。
とうとう見つけた! 鎖場!!!
いったいどれくらい歩いただろうか。
よくわからないが、その瞬間は突然訪れた。
歩いていて、ふと右手側に「鹿よけのネット」が途切れていることに気が付いた。そして、そっちの方向に何気なく視線をやると、そこに鎖場を発見したのである。
想像ではもっと大きく広い場所だったため、心底驚いた。(俺はこういうファーストインパクトを大事にしたいため、あまり下調べをしないのだ)
とにもかくにも見つけられたのだ。見つけたら登る!
とりあえず100均で買ったグリップばっちりの手袋をはめ、鎖のわっかに手をかけて登っていく。だが、登り方がいまいちわからず、最初のうちは腕力にまかせて登っていた。
ところが、だんだん届く範囲の岩場に足をかけないと難しくなっていき、やがてそれもツルツル滑って不可能になっていった。とくに雨に濡れており、履いているトレッキングシューズもまるで役に立たない。
中腹くらいまで登ったところで一瞬立ち往生。
ちょっと考え、やはりわっかに足をかけながらじゃないと進めないとなり、ゆっくりわっかを使いながら登っていく。しかし、想像以上に高さがあるな……。落ちたら終わりだな……。なんて考えていると、「そういや俺は閉所恐怖症のうえに高所恐怖症だったな」と思い出してしまい、体がぶるぶる震えた。
足をかけられるポイントを見つけたので、そこまで登って一旦休憩。
はたして俺は無事登り切り、また、降りてくることができるのか。
つづく