「おい、いいのか? これじゃ前回と一緒だぞ? もしかして雪で違いが表現出来てるつもりか? 違う、違うぞ。それは単なる気候の違いで、お前の表現は何ら変わっちゃいない。いいのか? ガッカリされるぜ? 体のはりかたが甘いぜ」
その魔の囁きが、このあとの俺を文字通り転落させるのだが、それはもう少し後の話である。
予定変更 リフト行き→行場コースへ
魔の囁きを気にしつつも、ゆっくりゆっくりリフト乗り場に向かっていたんだな。
ところがこの標識見つけちゃったんだわ。行場コースへ促す標識を!
実を言うと今回は行場コースにいってみようと思ってたのよ。結構ハードって聞いてたから、ヘッドライトとかヘルメットとかいぼいぼついた軍手も用意して持ってきてたからね。
ちなみに、行場コースとは、 最も難関と言われる「行場・不動の岩屋」を通るコース でかつては修行のために使われていたと思われるもので、「お鎖場」「胎内くぐり」「蟻の塔わたり」などがあるらしい。
なかでも「不動の岩屋」って言うところが気になってた。はしごで降りてく洞窟らしいんだけど、そんなの絶対気になるよね。
でも、ただでさえ道のりが過酷だって聞いて日和ってたのに、さらに雪積もってんだもん。「また夏に挑戦しよ」って思いながら降りてきたところにこの標識。
しかも、よく見りゃ距離がしれてる。(ように思えてしまった)
次の瞬間には矢印のさすルートを歩き始めていた。薄手のパーカー野郎は即断野郎でもあるのだ。