10月末。午前5時半、俺は愛車「鉄の棺桶3号」に乗り込み、星空に見守られながら家を飛び出した。
向かった先は、徳島県美波町にある「恵比須洞」である。
ちなみに恵比須洞というのは、
標高52メートルの岩山の内部が波に浸食され、直径30メートル、奥行き40メートルという大きな穴がぽっかり開いたもので、 珍しいイワツバメが生息しています。
また、岩山を巡る遊歩道があり、山上の展望台では、大浜海岸や太平洋の景色を満悦できます。
美波町の公式ホームページより引用
という何ともそそられる、冒険感のあるスポットのようだ。
そんなわけで今回は恵比須洞に行ってきたお話である。
平日だったため、出勤渋滞に巻き込まれないために早く出発したのが功を奏し、予定よりも非常に早く到着。付近にちょっとした駐車スペースがあるのだが、まだ午前7時半だというのに3台ほど車が停まっていて驚いた。
「まあ関係ねえや」と、愛機ペン太(PENTAX)を首から下げ、ポケットにGoProとスマホを突っ込み、車を降りた。
1年ぶりの県南冒険のスタートである。
だいぶ年季が入った説明書きを読むことなく、遊歩道を目指す。
ちょいとした疑問なんだが、結局のところ「恵比須洞」なのか「えびす洞」なのか、はっきりしないね笑 美波町のホームページでも表記がまちまちだし。
まあ、個人的にはひらがなのほうが良いんじゃないかなと思うけど。
お馴染み 棒
俺のように徳島県内をあちこち冒険している人はご存じだろう。標識や看板などのすぐ横に、こういう頼りがいのありそうな棒があるときは、「結構足腰使いますよ」って場合が多い。だから、これを見つけただけで覚悟を決めるのだ。
「でもまあ、1本しか置いてないってことは大したことはないだろう。何しろ俺は先週剣山で戯れ、鎖場を昇り降りして鍛えこんだ男だからな」と、棒を手に取ることなく遊歩道へ進むことに。
地形的にメインの「恵比須洞」までは、下りの階段を進んでいくことになる。
結構な段数があったと思うが、「きっと綺麗な景色が見られるんだろうな」という期待感が俺の足取りを軽やかにしてくれた。
俺はこういうとき、自分の期待感を抑えようとしない。なぜなら自然が俺の期待を裏切ったことなど一度もないからである。俺がどんなに期待を膨らませても、自然はそれを大きく上回るものを見せてくれるからである。
そして、今回もその上がり切ったハードルを自然は軽々と超えてくれた。
岩場に作られた遊歩道を進んでいくと、その中腹くらいのところに「恵比須洞」が見られるポイントがある。
恵比須洞(えびす洞)
正直、写真や俺の語彙力でどこまでここの良さが伝えられるかわからない。でも、まあ凄いんだわ。「これが波にくり抜かれたあとなのか!」と衝撃を受けた。
また朝の昇りたての太陽の光が差し込んできて、それがまあ美しい。
生きてる絵を見ているような不思議な感覚。「朝の太陽と山の組み合わせこそ最高」と思っていたけど、「朝の太陽と海の組み合わせも最高だな」と思ったね。
ちなみに岩肌の具合は↑のとおり。こんなゴツゴツゴリゴリした岩が、長い年月をかけて波に削られて穴が開いてるなんて凄いよなあ。
俺が1000年休まずに拳を打ちつけても、ちっとも穴は開かないだろう。
そんなバカなことを考えながら、「海ってすげーな」とその場に体育座りして、しばらく眺めた。あとから誰もやってこないのを良いことに、しばらくひとり占めすることが出来たのである。
10分ほどボケーっとしただろうか。
ふと遊歩道の先があることを思い出し、ふたたび辺りを探索してみることにした。そして、そこでようやくあの棒の意味を理解することになるのである。
つづく