世界初の滝ソムリエ徳嶋ダイスケは悩み、葛藤していた。
滝を飲み歩き、自分なりにテイスティングを重ね、レビューを公表すること10回。そろそろ滝ソムリエとしての所作に馴れてきた今日この頃。
だが、そんな徳嶋は常に頭を抱えていた。
「自分の表現力、文章力では読み手に滝の水の味を的確に伝えられていない」と考えていたからである。
たとえば徳嶋は「杉味」だとか「椿味」だとか、そういった表現をする。
だが、それはあくまでも徳嶋の主観的な印象でしかなく、結局実際に飲んでみなければ、どのような味なのかわからない。飲んだことのない人にも伝わらなければ、何の意味もないのではないか。
そんな思いが、徳嶋の頭のなかでぐるぐると渦巻いているのであった。
だが、ただ頭を抱えてみたところで事態が良くなるわけではない。だから、徳嶋はさまざまな勉強を開始した。