今年の2月から3月にかけて、かつて日本最大級の格闘技イベント「PRIDE」を観まくっていた。
200戦は確実に観ているなかで、「これは素晴らしい」「これは面白い」という対戦カードをランキング形式にしてみようと思う。
あらかじめ言っておくと、俺は寝技による一本勝ちよりも、パンチや蹴りによるKO決着が大好きなので、ぶん殴り合いや凄まじい蹴りの応酬などが多い試合が多くランクインすると思われる。(※ただし、必ずしもKO決着するとは限らない)
10位 PRIDE23 田村潔司VS高田延彦
言うなれば、高田の引退試合だね。エキシビジョンマッチ的なものだ。
で、結局2Rに田村がローキックを重ねて、綺麗なカウンターパンチを決めてKO決着。
田村が先輩に引導を渡し、男泣きがすべての一戦だったかなと。
ちょっと高田がローブローを2回もらって、試合中断があったんだけど、高田が退いてばっかりだったからのような気もする。
9位 PRIDE10 桜庭和志VSホイラー・グレイシー
グレイシー一族にありがちな、再三のルール変更要求を桜庭がことごとく呑んでいく。桜庭は「そのルールの中でボコボコにする」と頼もしい。何よりもスカッとするのは、ホイラー側の一方的な条件を桜庭が呑んだことによって芽生えたフラストレーションが、桜庭の攻撃で少しずつ発散されていくところ。怒涛のローキックは必見!
最後は桜庭のアームロックが思い切り極まり、腕が折れるギリギリの状態になったところでレフリーストップ。(セコンドのヒクソンはタオルを投げる素振りすら見せない)
8位 PRIDE4.0 イゴール・ボブチャンチンVSゲーリー・グッドリッジ
最初の方のPRIDEって圧倒的に打撃決着が少なくて、「アームロックが決まってタップして一本!」みたいなパターンが多かった。そのなかで、ボブチャンチンとグッドリッジは両雄豪腕。方やボブチャンチンは怪力が過ぎて運転中にハンドルを引き抜いてしまったほど。方やグッドリッジはアームレスリングの王者。否が応でも打撃による決着への期待が高まる一戦だった。
序盤は、「殴り合いは分が悪い」と判断したのかグッドリッジは組み合おうとして、ふたりが倒れ込むシーンが目立った。が、やがて、ボブチャンチンの突き上げるような拳が炸裂。バランスを崩したグッドリッジ。すかさずボブチャンチン、追撃のロシアンフック。そのままレフリーストップ。
勝者、ボブチャンチン。
本当はもう少し観ていたかった対戦カードだね。戦ってる方も、観ている方も少し不完全燃焼だったかなあと思いつつも、危険性を考えると止められても仕方ないよなという感じ。
7位 PRIDE5.0 桜庭和志VSビクトー・ベウフォート
体重を落としてこなかったビクトーへの公開お説教バトルだった。
ネリにも誰か、お説教してくれる選手がいればよかったんだけどね。
桜庭のバックスピンキックも、激しいローキックの嵐も、パウンドも、どれを観ても凄まじい勢い。さらに足へのパンチなんてのも打ってて、そんなの初めて観たな。
徹底的に懲らしめた桜庭は、柔術黒帯の実力者ビクトーに何もさせずに完封勝利。
さらに試合後には「もうちょっと強い相手としたいと思います」と言ってのけたんだからたまらない。
6位 PRIDE10 イゴール・ボブチャンチンVSエンセン井上
好戦的なふたりの対戦。期待通り、試合開始直後から、いきなりふたり共拳のぶん回し合い。パンチというよりも、もっと原始的な雄同士の殴り合いに思えた。あたったもん勝ちの激しい展開。
どのタイミングでかすったのか、ボブチャンチンの顔から出血。しばらく両者寝転がったまま、膠着状態が続く。
1R残り1分。ボブチャンチンが勝負に出る。
体勢を起こして、ハンマーパンチの連打。たまらず頭部を守るエンセン。しかし、ボブチャンチン、構わず左右の拳を叩き込む。大歓声にまぎれて、激しく肉を打つ音が場内に響き渡った。
そして、辛うじて1Rをしのいだエンセンだったが、「まだ大丈夫!」という声も虚しく、ドクターストップ。エンセンの悔しい感情が画面越しにも伝わってきて、胸にこみ上げてくるものがあった。
5位 PRIDE10 アレクサンダー大塚VSヘンゾ・グレイシー
ちょっと試合どうこうではないところで、面白いと思ったのをひとつ入れとこう。
ヘンゾと戦うために8キロもの減量をしてきた大塚。それを知ったヘンゾは大塚に「試合後にチョコレートをやるよ。で、一緒に食べよう」と言った。
試合後、ヘンゾは人を介して、大塚に約束のチョコレートをプレゼント。受け取った大塚はすぐにヘンゾの控室へと向かった。そして、シャワーを浴びているヘンゾのところへ行き、もらったチョコレートを差し出し、一緒に食べる。
俺が一番好きなグレイシーは、いつも笑顔で約束を守るヘンゾ。なのでランクイン。
4位 PRIDE22 イゴール・ボブチャンチンVSクイントン・ランペイジ・ジャクソン
両者大好きな選手同士の一戦。
試合直前、向かい合う両者。すると、ジャクソンがボブチャンチンに何か紙を渡しているのが見えた。その段階ではそれが何かはわからないまま、試合が始まった。
ボブチャンチンの左ハイキックがジャクソンに命中。追撃させてなるものかと逆に攻め返してきたジャクソンに対して、ボブチャンチン、冷静にクロスカウンター。さらに飛びついて技を極めようとしたボブチャンチンを、ジャクソンが捕まえ、抱え、持ち上げてリングに叩きつける。
そこから勝機を見出したのか、ジャクソン一気に畳み掛ける。強烈なボディスラムをぶちかます。
ラストはジャクソンがボディブローを打ち、ボブチャンチンの肋骨を粉砕。ギブアップを奪う。
ジャクソンはボブチャンチンを尊敬していたらしい。
ちなみに試合前に渡した紙は、控室に貼ってあった紙を折って、「これは俺のママからの手紙さ」といって渡したみたい。動揺させる作戦だったのか、単なるおふざけだったのか。俺はこういうの大好きなので、さらにジャクソンが好きになった。
3位 PRIDE26 クイントン・ランペイジ・ジャクソンVSイリューヒン・ミーシャ
地味に好きなのは、試合直前のジャクソンによる「モノボケ」だ。
この試合でもそれが楽しめる。試合開始直前、自分のポケットからイエローカードを取り出してレフリーに見せるという行為。意味はわからないが、思わずクスッとしてしまう。
ジャクソンは野性味溢れるイメージが強いが、実際はとてもクレバーな選手だ。ガードも堅いし、常に相手を観察している。ただ、一旦攻め始めると類稀な怪力を発揮する。
組み付いてきたミーシャを持ち上げてリングに叩きつけるほどの怪力。
途中、ミーシャがアームロックを極めかけるシーンが2度ほどあるのだが、ジャクソンは構わず空いている右拳をミーシャのボディに打ち続けた。さらに極めにきたミーシャの技を、体を素早く前転させて外すなど、柔軟性もみせるジャクソン。
スタンディング。ジャクソンの豪腕をかいくぐり、足を取るミーシャ。しかし、ジャクソン微動だにしない。逆にジャクソンがテイクダウンを奪い、そこから高角度から膝を振り下ろす。何度も執拗に振り下ろしていると、そのうちの一撃がミーシャのボディに入ったところでタップ。試合終了。
すぐさまジャクソンがミーシャに手を差し出す。
2位 PRIDE26 エメリヤーエンコ・ヒョードルVS藤田和之
アントニオ猪木に呼び出されて登場する藤田。(PRIDEにもよく現れて、盛り上げてくれる猪木さん)
右拳をぐるぐる回すというフェイントから、一気に鋭く突き刺すヒョードルのパンチ。思わず体勢を崩した藤田。すかさず蹴り込むヒョードル。だが、藤田も負けていない。その蹴りに自ら飛び込み、両腕で抱え込んだ。
藤田の左フックがヒョードルの顔面を打ち抜くと、難攻不落のヒョードルが思い切りふらつきはじめた。一気に場内大歓声。だが、ヒョードル粘る、粘る。すぐに藤田に組み付き、クリンチ。その後、藤田がテイクダウンを奪って、ヒョードルの上に乗るなどチャンス到来。
出血したヒョードル、再びスタンディングへ。
右ストレートを打ち込みざまに飛び込んでいくヒョードル。さらに左のミドルを蹴り込んでから、よろめく藤田の横面に左フックを打ち込んだ。たまらず手をつく藤田に、覆いかぶさるようにヒョードルパンチを打つ。思わず顔をあげた藤田の首元に、ヒョードルの太い右腕がするりと伸びてくる。
そこから一秒もしないうちに、藤田が苦悶の表情を浮かべてタップした。
結果として藤田は負けてしまったものの、最盛期のヒョードルをぐらつかせ、追い詰めかけたのは事実だ。非常に手に汗握る展開だった。
1位 PRIDE25 クイントン・ランペイジ・ジャクソンVSケビン・ランデルマン
このふたりの対戦にしては、かなり静かな立ち上がりだった。でも、後にして思えば、それは嵐の前の静けさと言えたかもしれない。共に繰り出すパンチは空気を切り裂くように切れ味が鋭い。
ジャクソンがランデルマンのタックルを切ってはボディに膝を入れていく。ジャクソンは終始冷静に一撃、一撃と着実に膝を重ねていく。ランデルマンも、何とかテイクダウンをとり、流れを引き寄せようとするが、ジャクソンの腰は尋常ではなく強く倒れない。
そのうちに、ジャクソンの強烈な膝がランデルマンの顎に炸裂した。ふらついたところを、ジャクソンが殴り倒してパウンド。そのあまりの激しさに、レフリーが試合を止めた。
試合終了直後、なぜかヴァンダレイ・シウバがリングに上がってマイクパフォーマンスをして乱闘騒ぎになる。
が、その後にランデルマンがジャクソンの控室にやってきて、
「言いたいことがある。本当にお前は強い。シウバもお前には勝てない。誰にも負けないように頑張ってくれ。お前以外に負けたくない」
と言った。
後に、ふたりは友達同士になる。一番好きな試合。
まとめ
ランキングを見てもらうとわかるだろうけど、
ロシアンフックをぶん回すイゴール・ボブチャンチンや陽気なパフォーマンスと野性と知性が入り混じった戦い方を見せるクイントン・ランペイジ・ジャクソン。そして、60億分の1と言われたエメリヤーエンコ・ヒョードルなど、わかりやすく力強い選手がお気に入りなんだな。
でも、全試合を観たわけじゃないから、「どうしてコレが入ってねえんだよ」とめちゃくちゃ言われかねないほど穴ぽこだらけのランキングなんだな。ドン・フライと高山善廣の真っ向勝負も入れたかったんだけど、俺はその試合をフルで観ておらず、ダイジェストしか知らないから省いた。