無事港に戻り、停めてた車に乗り込むと時刻は午後1時前。朝から何も食ってないし、倒れそうになるほど歩いてるし、かれこれ5時間くらい運転してるしで腹ペコだった。
ホテルに向かう道すがら、
道の駅 日和佐があるのは知ってたから、そこで何かしら食べようと決めて、ふたたびドライビング。
録音したいろんなラジオを聴きながら、「リスナーも天才ばっかりかよ!」なんて思いながら運転、運転、運転。
で、道の駅 日和佐って結構食事ポイントが充実してて、ラーメンもあるし焼きそばも、丼ものなんかもある。
迷いに迷って、一番はじっこのお店で阿波ポーク丼をいただくことにした。
前回来たときは、
焼きそばをテイクアウトして駐車場で食ったんだけど、今回は店内で食うことにした。
おばあさんひとりでやっててさ、
石油ストーブの上に置かれた扇風機がまわってるっていう、シュールなお店。
風通りもよくてね、涼しい。
肝心要のポーク丼もめちゃくちゃ旨かったしね。
てっきり丼単品かと思いきや、小皿にちょいとした煮物風の野菜と、おつけもの。地味に嬉しい何ちゃって定食風な感じ。
煮物風の野菜は、本当に素朴な味付けで優しい感じでね。ガツンと塩の効いたおつけものとは違った個性の箸休めになってる。
「うめぇ、うめぇ」とむさぼり食ってるとさ、そこに「すんません」って一人の男の人がやってきた。
店にはテーブルがひとつしかないから、「相席になるかな?」なんて思いながら食ってた。まあ相席するのは別に平気だからいいんだけど、何やら店のおばあさんと話してるんだな。
「あのー、こちらで珈琲は買えますか?」
そう聞いてた。店先に掲げてるメニューに書いてあるのに、変わったことを言うなあと思った。
多分おばあさんも同じように思ったんだろうね。一瞬「はあ?」みたいな表情になりつつも、にこやかに、
「あー、ありますよ」
と答えた。
俺は「何だ、このやり取り」と思いながらポーク丼をバクバク食べてた。
すると、男の人が
「えっと、こちらで使ってる(珈琲)豆を売ってるんでしょうか?」
と質問を追加してきたんだよ。なぜか飯屋に珈琲豆買いに来たらしい。
俺も驚いたけど、おばあさんはもっと驚いた様子で「豆は売ってません」と返してた。
「あー、そっすかー」と言い残すと、男の人は去っていった。
多分だけど、その店は喫茶店みたいな本格的な珈琲を出してるわけじゃないと思うんだよね。店の感じ的にお食事どころだし、食後の1杯感覚だと思うんだ。
飲んでないから何とも言えないけど、多分インスタント、良くて市販の豆だと思うのね。おばあさんとしても、先客の俺の手前、「あー○○っていう市販の豆ですよ」「うちはインスタントです」とも言えずもどかしかったんじゃないかな。
それよりも、店の外観も「飯を食べるとこだよ!」感でいっぱいなところだから、何でここで珈琲豆が買えると思ったのだろう。それが一番の謎だ。
これが旨い飯を食いながら、
俺が巻き込まれた、微妙に不思議でちょびっとだけモヤッとした体験である。
意外と文字数多くなったので続く。