雨や霧を意に介さず、マイペースを貫いて剣山での紅葉狩りを楽しむ我々徳嶋ブラザーズ。気が付いたら山頂に到達していたのだが、ここにきて少しずつ気温が低下。さらに強めの風が吹き始め、剣山からの試練が与えられ始めてしまった。
だが、そんな程度のことでは我々の歩みを止めることはできない。
我々には紅葉を楽しむ他に、非常に楽しみにしていたことがあるからである。
それは、「山頂で塩むすびを喰らう」ことだ。
これに関しては絶対に譲りたくない儀式なのだ。実際、剣山に向かう道中、コンビニに寄ったのだが、まさかの「塩むすび」売り切れ。仕方がないので、コンビニをはしごして購入するほど徹底した我々の形式美なのである。
それはさておき、ちょうどいいことに山頂には我々以外には誰もいなかった。つまり、徳島県で最も高い空間を我々が完全に独占することが出来たというわけだ。多少天気が悪いなどは大した問題じゃない。
我々はとりあえず次郎笈(じろうぎゅう)が一望できるベンチを陣取った。
最高の食事
約1時間ほど雨に濡れまくりながら探索、撮影をして到達した頂で「いただきます」。ひと口含んだ瞬間に「わあ、うめえ!」。もはや反射的に声が出てしまう。パブロフの犬ってやつだな。塩むすびの俺。
俺もマーもしっかり食事。後半戦もしっかりばっちり楽しむためにエネルギーを回復させることに。
マーが重いのに持参してくれた温かいお茶をすする。芯から冷えた体が一瞬で温まっていく。これは最高の一杯である。
もともとボキャブラリーも乏しく、味もよくわからない俺であるが、この「山頂での塩むすび」と「温かいお茶」の良さを表現する言葉は存在しないと思っている。ただ、実際に体験さえすれば誰しもが理解できる良さとだけ書いておこう。
紅く染まりゆく次郎笈
ちょっと天候の流れが読めない感じだったので、先に景色を撮影してから飯にしようと思い、山頂端っこに立つ。
剣山は別名・太郎笈(たろうぎゅう)っていうんだけど、その頂上から眺められる弟分的・次郎笈を眺めてみることに。
ふと不思議に思ったのが、「剣山は山頂から紅葉が降りてきている具合なのに、次郎笈は下から紅葉が登っていってないか?」ということだ。これは、剣山と違って、次郎笈には「山頂付近に紅葉する種の木々がないから」なのか、何か他に事情があるのか。
(ここらへんからGoProで動画、写真を撮り始める)
ベンチを軸に休憩がてら撮影をして遊んでいると、だんだんと様子が変わってきた。というのも霧というか、靄というか、雲というかが辺りを覆いつくし始めたのである。
マーと「もしかしたら雲海が見られるかもしれんな」と話していると、だんだん白みが強くなってきた。
ちなみに雲海とは、
雲海(うんかい)とは、山や航空機など高度の高い位置から見下ろしたとき、雲を海に譬える表現。山で見られる雲海は、山間部などでの放射冷却によって霧、層雲が広域に発生する自然現象による。雲の海に山々が島のように浮かんでいるように見えることから雲海と呼ばれる。
Wikipedia 雲海より抜粋
らしい。ということは、これも広義でいえば雲海っちゃ雲海と呼んでいいのかしらね。
よし、俺はこれを雲海と認めることにしよう。(これが雲なのかもわからないけど笑)
そして、やがてモクモクとした分厚い雲らしき白いので辺りが包み込まれた辺りで、他の登山者たちが続々とやってきた。
お互いにこやかに挨拶。
そして、何人かの登山者たちに頼まれシャッターを押した。マーとふたりで5、6組に頼まれたと思う。(もし剣山など自然の中で俺っぽい人に遭遇したら声をかけてほしい。快くお受けする)
山が楽しいのは、出会う人たちとこうしたコミュニケーションが自然に楽しめるからというのもあるね。福岡県や愛媛県。東京都。香川県。岡山県などいろいろなところからの出会いがあった。
コロナ禍にあって、こうした出会いが出来るのも開放された完全なる外だからこそだな。
宝蔵石神社はどこに?
雲海を眺めながら、体を横たえて「ひとやすみ、ひとやすみ」した後、俺たち徳嶋ブラザーズは次の目的地に向かって出発することにした。
その途中に、ふと気づいて気になったことがある。
それは……。
宝蔵石神社がなくなっていたことだ。
いや、別に取り立てて信仰心があるわけじゃない。だが、前にあったものが今回なくなっていたら気になるだろう。
真夏の剣山に挑んだときも、吹雪く剣山に挑んだときも、初めて兄弟で剣山に挑んだときもあったんだけど、今回はなぜかなくなってたんだな。修繕中?
ただ、ここらで寒さがひどくなり、雨風も強くなったため情報収集する気力も削がれて、とりあえず第3の目的を果たすため、我々は剣山山頂を後にした。
※ちなみに10月23日(金)の徳島新聞に「紛失」的な記事が載っていた。どうやら飛んでいってしまった可能性があるらしい。
つづく