大道銀天街とその周辺を探索中、小腹が空いた俺はふらふらしながら飲食店を探した。そして、気になる外観のお店を発見したので、「ここにしよう」と即決。
こうして俺は、白いピアノという喫茶店に入った。
まず階段を登ったところに玄関があるから、白いピアノは「2階」ということになる。
白いピアノ
じゃあ1階は何があるかというと、わからない。もしかしたら店の方の自宅なのかもしれないし、空いたテナントなのかもしれない。
それはさておき喫茶店の内装の雰囲気の良さよ。よくわからないスピーカーの年季の感じや、おそらく店名の基となっているだろう、白いピアノ型の本棚。
それからランタン? ランプ? 味わい深い照明もいい感じ。
窓際の4人掛けのテーブル席も「見晴らし良さそうだなあ」と思ったが、
せっかくなんで白いピアノ型の本棚の上をテーブルにしたカウンター席っぽいところに座った。
平日の10時台。お店の方もまさか丸坊主の若造が買ったパンを持ってやってくるとは思わなかったんだろうね。何か戸惑いながら出迎えてくれたよ。
時間も中途半端でさ、モーニングしかないだろうから「モーニングお願いします」と注文。(あとから気付いたことだが、このお店ではモーニングが2種類あったらしい)
改めて店内を見渡す。
お客さんは俺だけ。こんな素敵な味のある喫茶店を独占出来るのも、平日に休みがとれる仕事がゆえにやなあ。贅沢な時間。
それにしてもマンガがたくさん並んでる。景気の良かった時代なんかは、あらかた目処がたった営業マンがランチがてら長居して読みまくってたんじゃないかな。ある意味ホンマのマンガ喫茶だ。
そんな勝手な想像を膨らませてると、お待ちかね。モーニングがやってきたよ。
白いピアノ モーニング
サラダにオムレツ、トースト。コーヒー。
すげーいい感じのラインナップ。わかりやすく「モーニング」な並びでホッとするよ。
まずサラダからいただく。
最初からドレッシングがかかってたんだけど、これがまあ旨い。俺の好きな、あっさりした少し酸味あるやつで、一気にわしづかみされた気がする。
ちょっとテンションが上がったところでトーストをかじってみることにした。
この3等分されたトースト。バターだかマーガリンだかがすでにつけられた状態なので、そのままいただく。
表面パリパリ。中フワフワ。ほどよい焦げ具合。そして、絶妙な香ばしさ。最高じゃないか。口の端についたパンくずを拭いつつ、ほくそ笑む。
そして、肝心のコーヒーに手をつける。
さて、白いピアノのコーヒーは元「コーヒー苦いから飲まない人間」だった俺でも大丈夫なやつなのか……。
ゆっくりカップをたぐりよせ、恐る恐る口元へ。そっと口に含んでみる。……うん、大丈夫。ちょっと苦みが強い気がしたけど、ブラックでも美味しくいただける!
でも、もう少し甘いのが良かったので、砂糖を3杯いれた。もちろんミルクも入れた。
コーヒーも旨いのを確認したから、まだ手付かずのままのメインディッシュにとりかかろうかね。
俺は早食いなほうだ。だから、まだここまで1、2分程度しか経っていない。つまり、オムレツもまだホカホカだろう。
ナイフとフォークで切り分けながら、パクッ。
ふわとろ卵は、ほのかに甘くて、かすかに塩気。これは初めて体験するオムレツだが、めちゃくちゃ好きな味だ。
正直いうと卵焼きは甘いのより、塩気あるほうが好きなんだな。卵焼きに限らず、おかずは甘いよりしょっぱいほうが好きなのだよ、俺は。
でも、このオムレツはその好みのストライクゾーンの、外角低めギリッギリ「ボール」のコースに伸びてきて、手前で急激に変化して「ストライク」になってきたのだ。
食べた印象としては、魔球のような不思議な旨さ。さて、苦手な食レポを無理やり好きな野球で例えようとして失敗したところで、砂糖をたっぷり入れた甘いコーヒーをひとすすり。
美味しくオムレツを堪能し、コーヒーをすすりながら、優雅な時間を過ごす俺。しかし、何かおかしい。何かが妙だ。何なのだ、この違和感。何か重要なことを見落としているかのようなモヤモヤ。
……釈然としねえことがある!
それは今に始まったことじゃない。
実は「いただきます」の前、もっと言えばお店の方がモーニングを目の前に置いてくれた瞬間から気になっていたことがあった。
ここでもう一度「モーニング」を振り返ってみよう。写真を見返しながら、ひと
サラダにオムレツ、トースト。コーヒー。そして、わざわざ触れなかった水、砂糖。……塩。
ん? 塩?
何か塩をふらなきゃいけないものなどあったろうか。まずサラダ。これにはかけないよな。あれだけ旨いドレッシングがかかってるんだもの。
オムレツにもかけないだろうし、コーヒーに塩なんかあり得ないだろう。
……まさかトースト……?
そこまで記憶を整理し、謎解きをしていると蘇ってくるものが不意に。何かグルメ漫画で喫茶店の話があり、そこでおじさんがトーストに塩を振っている描写があったのを思い出したのである。
それを読んだとき、「いつか俺もやってみたいな」と漠然と思ったことも同時に蘇ってきた。
しまった。
完全に忘れてしまっていた。もっと注意深くトレイの上を観察すべきだった……。マスター、今回は俺の完全敗北だ。参った。降参だよ。
この塩事件はさておき、これだけ楽しめて400円だからね。大満足でお会計を済ませた際には、「美味しかったです」とお伝えし、お店を後にするのであった。
商店街巡りと同時に喫茶店巡りも悪くないなあと思った。また次回更新までバイバイ!