いざ入船。
乗客はとりあえず最初船底に用意された海中展望室に収容される。
両サイドを巨体の男性に挟まれる不運に見舞われたものの、乗客は少なく、席が半分以上空いていたため、乗客同士顔を見合わせて「これ、実質どこでも移動し放題ですよね??」みたいな空気になり、事なきを得た。
実際、船が動き出した時点で誰かが途中乗船してくることはありえない。
よって皆、ちりじりに好きなように座ることとなった。それについてアクアエディの人が注意することもなかった。(そういえば最初に割り振られた座席では、全員B側の席だったのだがあれはなんでだったのだろう?)
何気なく見上げた壁には何かがぶらさがっていた。よく見ると「黒く中が見えないエチケット袋」だった。俺は、このとき非常によくないイメージを頭に浮かべた。
気を紛らわすため、海中展望室内を見渡してみる。
天井にはまるで天の川を模したような装飾(よく見ていると、流れ星のように動く光も見られた)
ネオンライトのような近未来的な光で妖しく光る周辺。
エアコン機能はないのか、密室となった蒸し暑い船内。。。
窓の外には濁った海。。。当然窓を開けることは出来ない、ありえない。
しばらくして、甲板に出ても良いことを知った俺は新鮮な空気を求めて階段を登った。
少し風が強く、アクアエディが進む勢いで跳ね上がる水しぶきが片っ端から俺たち甲板に上がった乗客たちを濡らしたが、そんなことは露ほども気にならなかった。