店先にいくと、俺がイメージし、欲していたとおりの形で鮎が焼かれていた。
ところが肝心のでこまわしのほうが1本も焼かれていなかった。
女将さんいわく「もうちょいしたら、焼くけんな」とのこと。仕方ないので、まずは鮎を1本買って食べつつ、でこまわしの完成を待つことにした。
鮎を受け取ったとき、女将さんが「滝を見ながら食べたらいいよ。綺麗やけん」と言ってくれた。
(そういえば去年も滝眺めたっけなあ)と思いつつ、礼を言って鮎を手にすぐそばにある滝まで歩いていった。
ここ数日はそこそこ雨が降ったからだろう、滝は水量もしっかりあって迫力があった。
記憶は定かではないが、去年見たときよりも良い感じに思えた。椅子やベンチなどはないので、ぼんやり突っ立って滝を眺めながら鮎をひとかじり……。
うまい!
もともと鮎は結構好きなほうだったが、これはかなり旨かった。
塩加減も絶妙で、じっくり炙られるように焼かれているからか身もしっかりふっくら柔らかい。ワタの苦味も旨味たっぷりでクセになる。これはいい。最近ふたたび飲めるようになった日本酒でもあればたまらなかっただろう。
贅沢をいうのなら、ここに新鮮なすだちでもあれば完全完璧だったな。