気づかないうちに、俺の膝上に何か白くてフワフワでフカフカした子が座っているではないか。一体いつの間にやってきたんだ、君は。
戸惑っていると、後から別のお客さんがやってきて隣に座った。そして、この子をじーっと見つめて、「この子は目をそらさないね。人物だ。……あっ、いや犬物か」と言って爽やかに笑った。
草刈正雄風のダンディで優しげなおじさんだった。
「たしかに肝が据わってますね。俺も見習いたいものです」と言うと、おじさんはまた笑った。やがておじさんは「今日は混んでるから、また来よう」と言って帰っていった。