ひとつひとつ思い返せば、きりがないほどの思い出が詰まった鉄の棺桶2号。いつもと変わらず、黙々と俺を目的地に運んでくれる。
そのひたむきさがいとおしくて、堪らなかった。込み上げてくる様々な感情を、ありのままに受け入れながら、黙々とハンドルを握った。
我々の思い出の場所は、吉野川市・掘割峠にあるスポットで、何度も訪れているお気に入りの場所である。(ちなみに弟やプラムとも来たことがあるところで、自販機とデカい人形が目印の不思議なところだ。Googleマップで見てみたら「カフェ」扱いになっている間抜けなところである)
何でも夜景が綺麗に見えると聞いていたのだが、これまで一度も夜に訪れたことがなかった。だから、最後の夜はそこから一緒に夜景を眺めてやろうと思ったのだ。
片道15分程度。毎度何時間も走りまくってきた俺たちにしてみれば、非常に短い冒険である。けれども、じっくりゆっくり。噛み締めるように、その短く大切な最後の時間を過ごした。