前回までのあらすじ
神通滝の水を飲んで、帰ろうとしたら、背後からバチバチっと鋭い視線を感じた俺。振り返るとそこにはヤツがいた。
「やべっ、観光客か?」と羞恥心が沸き起こったのと同時に、別の記憶も蘇った。2年前の熊とニアミス(たぶん)事件だ。
季節的にも似ていたし、冬眠から覚めた熊が寝ぼけてやってきていても不思議ではないと思った。先に沸き起こった羞恥心は一瞬で消え失せ、恐怖心に呑み込まれてしまった。
おそるおそる振り返ってみた。「熊がいた場合、全力で横をすり抜けて走ってみよう」と考えながら……。(ちなみに熊は、時速40キロというウサイン・ボルト並みの速度で走るらしい)
そこにいたのは……。
たぬきち
少し遠巻きにポツンとたたずむ一頭の獣だった。つぶらな瞳で俺をまっすぐに見つめているのが非常にかわいい。てっきり熊か人間がいると思っていた俺は心底ホッとした。
「なんや、狸やったんけ。よかった~」
「おーい、たぬきち!」
安堵した俺は、5分くらい声かけ続け、手を振り続けた。写真を撮り、動画を撮り。それでも無反応なたぬきち。
あれ、これ近付いても大丈夫なんじゃね?
と岩場を滑りながら、よじ登る俺。2,3回落下しかけながらも少しずつ登っていく。
「よう、お待たせ、たぬきち」
息を切らせ、顔を上げると、たぬきちはいなくなっていた。
「まったく。照れ屋たぬきめ。ふふっ」
そして、「今日はマズい滝も飲めたし、狸とコミュニケーションも取れて、ネタいっぱいやなあ」とホクホクで帰路につく俺。
この時の俺はまだ、自分がとんでもない大間違いをしていたことに微塵も気づいていないのであった。
帰宅後家族に「狸見つけた!」と写真を見せたら、「これ鹿ちゃうん?」と言われて、「そうか、鹿か」と納得。そして、「いやあ、鹿を狸と間違ってしまいましてね。いやあお恥ずかしい」的なツイートをしたわけさ。
そしたら、数名のフォロワーさんから、
「いや、ニホンカモシカじゃね?」とのご指摘をいただき、調べてみると徳島にも生息してるらしいことがわかった。ニホンカモシカなんて、はじめの一歩でガゼルパンチを体得する場面でしか見聞きしたことがなかったから、まあ驚いた笑
「なんや、鹿は鹿でも、ニホンカモシカやったんか」なんて言いつつ、更に調べてみたところ、
カモシカは鹿ではなく、牛科のヤギらしい。つまり、俺が狸だと思ってたのは狸でも、鹿でもなく、牛やらヤギやらの仲間だったことが発覚。この何ともいかんともしがたいモヤモヤを込めて、締めの一言を放ちたいと思う。
俺の目はどうなってんだ!
これが言いたいがための記事。ゴールデンウィーク最終日の夜にあげるような内容ではないが、どうしても書きたかったんだから仕方ない。以上、徳嶋ダイスケでした。ばいびー。