突然背後から声をかけられた。
「どうも、釣れますか?」
このあたりでは馴染みのない標準語だ。
振り返ると非常に品のある佇まいの男性がにこやかに笑っていた。
「いやあ、まったくですね。ちょっと100均の竿を試して遊んでます」
と、言ってから「今の台詞は、本当はちゃんと釣りしてるんだけど、あえて遊びを取り入れちゃって冒険中です♪」みたいな感じだと思い、恥ずかしくなった。
「そうですか。私もちょっとサビキで遊んでみようかと思いまして。隣、大丈夫ですか?」
「は、はい。どーぞどーぞ」
すると、男性は後ろに立っていた自分の家族を呼び寄せた。奥様にお姉ちゃん、弟くんに、妹ちゃんという感じ。
そこからは非常に賑やかなお隣さん一家の楽しげな会話をBGMに、再び釣りに集中することにした。(クールなお姉ちゃんとわんぱくな弟くん、真似っこ妹ちゃんのやり取りが実に面白いのだ)
しかし、肝心の釣りはと言えば全く進展なしのボウズだ。どうしたものか……。仕掛けを弄ってみるかなんて思いはじめたときだった。
「サビキはな、こうやって……」
「竿はこうやって……」
と先ほどの男性(以下お父さん)による、子どもたちへの釣り講座がはじまったのだ。口で説明しながら、実際に竿を振っての講座。瞬く間に一匹釣り上げてみせ、家族から歓声が上がった。
それを見よう見まねしてみる弟くん。お父さんの言うとおりに仕掛けをたらした。すると、「あっ、釣れた!」
まさか竿を振って1秒で釣り上げるとは羨ましいな。。。いや、それよりお父さんのアドバイスを試してみよう。
盗み聞きしたお隣さんのアドバイスを真似して、角度を意識して竿を振り、カゴを揺すり、としてみたところ初めてのアタリが!
「!?」
そして、釣り上げたのがコチラ。
17年ぶりの釣果に胸が高鳴った(17年前、宿泊訓練で釣ったの以来だ)。と、同時にお隣さん(お父さん)が俺の心のなかで、
(お師匠さま……(*´∀`*))
となったのは言うまでもない。
そして、「100均の釣竿で釣れるんだろうか」という不安は完全に払拭できた。
そこから怒濤の爆釣……とまではいかないまでも、たま~にチョロチョロ釣れるようになっていった。