鳥返滝
この滝に近づこうと下っていくと、先客がいることがわかった。岩に座っている女性二人組。どうやら外国人のようである。後ろから声を掛けたら驚かせてしまうかもしれない。回り込み、正面から声を掛けてみることにした。
話しかけてみることした、と言えば、さも「マルチリンガルでござい」のように聞こえるかもしれない。実際は「ハーイ」と「ハロー」、「サンキュー」くらいしか咄嗟に出てこない。あとは、英単語と顔芸とパッションの合わせ技で何とかするタイプである。
「ハーイ」と声を掛けると、向こうも「ハーイ」。そこでわかったのは、おそらく二人は親子。ふたりとも映画から飛び出してきたかのような美貌である。滝の妖精親子かなと思った。
すると、母親らしき女性がスマホを取り出し、写真を指差して、不安そうに「デンジャー?」と聞いてきた。覗き込むと、そこには、そこらへんで撮ったらしき蛇の写真。
正直、蛇の種類には詳しくない。が、ここは山が深すぎて完全に圏外。スマホで調べることも出来ない。(まあ、だからこそ俺らに聞いてきたのだろうけど)
だけど、適当に「ノープロブレム」なんていうわけにもいかないので、「すねーく。うーん、うーん、デンジャー」と「うーん」のところで表情を作り、「たぶん危険」と伝えた。メイビーが出てこなかったのである。何となく伝わったのか、妖精の母は、うんうんと頷き、次の写真にスワイプ。
ふたたび覗き込むと、そこには超でかいミミズの写真。山でもなかなか見ないサイズだった。不安そうに「すねいく?」と聞いてきたので、「えっと、うぉーむ? ちゃうわ、うぁーむ。あ、ワーム、のーでんじゃー」と答えた。すると、滝の妖精親子は顔を見合わせて安心したようだった。
少し話を聞いてみたところ、彼女たちはスイスからやってきたことがわかった。彼女たちは「ありがとー」と言って、去っていった。
その後、俺たちも冒険を再開するのだが、うっかり鍋割の滝を見忘れたまま、下ってしまう。
とはいえ、メインはやっぱり轟の滝だ。ちなみに轟の滝は、先ほどの階段地獄を乗り越えなくても見られるのでご安心ください。
轟の滝に向かおうと進んでいると、新たにステキな出会いがあった。
猫たちとの遭遇

おそらく神社周辺で飼われているであろう、2匹の猫たちと遭遇した。
しばし滝登り山歩きで疲れた体をリフレッシュするため、2匹と触れ合う。
蛇に限らず、猫の種類にも疎い俺には、この子たちがどんな種類なのかはわからない。ただ「可愛い」ことくらいはわかるので、人語でそれを本猫たちに伝えたところ、お気に召したようで、ごろごろ言いながら体当たりや頭突きをしまくって答えてくれた。
そう、何もわからなくても、「知ろうとする気持ち」「伝えようとする気持ち」があれば、案外何とでもなるものである。
妖精親子との再会
猫たちと別れ、轟の滝へ向かっていくと、看板の前で頭を抱えている妖精親子を発見した。
再会のしかたがほとんどRPGみたいで笑ってしまう。「あれ、絶対迷ってんな」と弟マーに目くばせし、ふたたび声を掛けてみることに。「ですてねいしょん?」と聞けば、「てんぷる」と返答。
格闘技好きの俺の脳裏では、一瞬だけ「え? こめかみ?」という認識があったコンマ数秒後、「あ、神社ね」と変換されたのは、ココだけの話である。
「あっち! あっち」と全身を矢印にして伝えると、「おー、さんきゅー」と笑っていた。
とりあえず俺たちで先導しつつ、ふたりを案内してから滝を目指すことにした。
神社前に連れて行き、あとは滝を目指して歩いていると、ふたりもついてきているのが見えたのでそのまま進んだ。
轟の滝

これまで眺めてきた滝も、どれも素晴らしい。
しかし、圧倒的な水量、圧倒的な高さによる豪快さは別格である。
滝つぼに叩きつけられ続ける水の塊は、たえずはじけ飛び続けて辺り一面を濡らし続けていた。
天然のミスト。毎回ずぶ濡れになるのだが、それも含めて楽しむ滝。
弟マーも感嘆しながら見上げては、愛機のシャッターを切り続けていた。
少し遅れてきた妖精親子も何やらふたりで話しながら眺め、写真を撮っていた。そういえば、スイスって凄い滝がいっぱいある国だったような……。それを覚えていれば色々聞いてみたかったな。
ライン滝を有する国のお人たちが、徳島最強の滝を見上げて何を思ったのか。興味深い。
とかく、楽しい冒険となった。
