ぐるぐると細い道を登っていく。
ほとんど対向車もなく、快適なドライブだった。ほどなくして堀割峠に辿り着いた。
そこから見える夜景は、たしかに綺麗だった。でも、何となく寂しく、何とも言い様の無い感覚に、純粋に景色を楽しむことが出来ずにいた。
それからしばらく俺たちは無言で夜景を眺めた。
名残惜しさは否めなかったが、いつまでも居座り続けるわけにもいかない。とりあえず来た道を戻ることにした。
これが一緒にいられる最後の冒険なのだと思うと寂しくて仕方がなかった。
これがもし、また別の誰かの愛車となるのであれば少しは気持ちが違ったかもしれない。だけど、廃車なのだ。
本当にお前は全うしたのか?
本当にお前は満足したのか?
本当にお前は俺と一緒で良かったのか?
俺は楽しかったが、お前はどうだった?
問いかけても仕方ないのに、問いかけるしか出来ない。無論返事もない。ただ、ひたすら俺のために進み続けてくれるだけ。
散々無茶な道を走ったし、散々無茶な距離を走った。いらぬ傷をつけてしまったこともある。無事故でいられたのが不思議なくらい沢山走った。