イメージしていたよりも麺にコシがあり、「しばらくは丸呑みしてけば杯稼げるんじゃね?」戦法を早々に断念せざるを得なかった。なるほど。讃岐うどんの魅力がここにきて俺の卑怯な戦法をつぶしてくるとは、さすがは香川県。侮ったことは一度もないが、やるではないか。
少し噛んでは呑み込み、少し噛んでは呑み込みを繰り返す。
実は1杯目を食べた瞬間に、立ち上がって、あの大食い女王・菅原さんがやってた「熊落とし」をやるという小ネタをやろうかと密かに思っていたんだけど、そういう空気でもないなと思い断念。気付かれずにスルーされても悲しいし、何よりテレビカメラの前でスベるのはいかにド素人な俺でも怖かった。
ただひたすらに、真摯に土柱麺と向き合うことにした。
ずずっ、旨い。ずずっ、旨い。
恐ろしいことに何杯食べても土柱麺は旨かった。ただ少しずつ腹に溜まってくる感じだけが増幅されていくのがわかり、「あっ、だんだん胃袋が圧迫されてきとるな」というのを感じた。
ずずっ、旨い。ずずっ、旨い。
で、だんだん「そろそろギブかな」「いや、もうちょい頑張ってみよう」という逡巡する心境に代わっていくのね。そのどっちつかずな迷いの境地に差し掛かって、ちょっと苦しい状態で、それでも土柱麺をすすってたのよ。
そのときだ。俺の心をへし折る、とある人物のひと言が発せられたのは……。