そうだ、人形浄瑠璃観に行こう!
人形浄瑠璃とは、人形を黒子3人がかりで動かし、別の語り手が物語や役になりきり、さらに別の三味線演奏者が心理的な描写などを表す舞台だ。
実は俺は「人形が怖くて仕方ない男」だ。理由はわからないが、子どもの頃から怖かった。(多分表情を読んでいる子どもだったから、それが出来ない人形が怖かったのかも)
だけど、前日の晩に稲川淳二の「生き人形」を聴いてるうちに「人形浄瑠璃」が気になりはじめた。そして、聴き終わる頃には観に行く決心を固めていた。
どこにいけば良いかはわかってる。
目的地は「阿波十郎兵衛屋敷」だ。
まずはそこに向かって出発した。
阿波十郎兵衛屋敷
入り口はこんな感じで、
入口で入場券(一般・個人410円)を手に入れると、館内の女性が案内してくれた。
まず通されたのは、小さいけれどもしっかりとした造りの劇場チックなところ。そこで上映される人形浄瑠璃の歴史や、関係者のインタビュー映像を観る。
(ここからは少し気を遣って写真を撮ったため、やや画質がいつも以上に悪いのでご了承下さい。。。)
まだ早いからか、客は俺と外国のお姉さんだけだ。
それを観終えると、次は小さな展示室。人形浄瑠璃に関するアレコレが見られるところに通された。
ちょうど土曜ということで、ボランティアのおじいさんが館内を説明してくれることになった。
俺の質問疑問に目をキラキラさせながら答えまくってくれた。
おじいさんに教えてもらったこと
たとえば、浄瑠璃の人形には手を「グー」「パー」させる構造というか装置がある。黒子がそれを操作することで手を動かせるのだが、それを「差し金」というんだって。これは、「お前は誰の差し金だ!?」ってセリフでお馴染みの「差し金」の語源だという。
他にも、大阪では「浄瑠璃」ではなく「文楽」っていうらしい。また人形の頭の部分の呼び方は「かしら」で同じなんだけど、徳島では「頭」で「かしら」と読ませ、大阪では「首」で「かしら」と呼ばせるんだって。
文楽で使われる人形も、徳島のものが多い。
また大阪は古くから室内の舞台設備が充実していたので、遠くからでもよく見える。だから、人形の顔が小さい。逆に徳島では人形の顔が大きい。それは屋外で舞台をすることがあったり、照明設備が不充分なところでやることがあったりするので、お客さんから見えづらいからだ。
あと人形の髪の毛には、本当の人の髪の毛を使われることもあるが、基本はヤクっていう毛の長い牛みたいなやつの、尻尾の毛を使うらしい。(白いヤクの毛を染めて使う)
物凄く気が合うおじいさんだったので、終始楽しかった。
おじいさんとうろうろ
史料館みたいなのを出て、またすぐの建物に入ると、そこでは三番叟(さんばんそう)って3体の人形が金屏風の前に立っていた。なかなか怖い。。。
だが、おじいさんは俺が遠慮してると思ってくれたのか、「ほら、座敷上がって写真撮れ、撮れ」と促してくれた。
そこを出ると、
恐らく岩石たちは昔のままの配置だとされる庭だった。
立派な松の木もあったが、3代目らしい。
そうこうしてるうちに「人形浄瑠璃」の劇が始まる時間になった。おじいさんに連れられて、最初に映像を観た劇場に入った。
「前の方がいいよ。迫力あるし。ただ、前すぎると全体が見えんけんな」「写真もいいけんな。ただフラッシュはダメや」などと教えてもらった。
「さあ、はじまるぞ」と言い残しおじいさんは消えていった。
人生初人形浄瑠璃
劇は全部で30分ほど。
ざっくりとした内容を説明しておくと、
祖母に預けられた幼い女の子が、両親を追って一人旅。大阪・玉造で立ち寄った家で偶然出会う女性がいた。実はその女性こそが女の子が追っていた母親なのだが、わけあって名乗れない。最終的に突き放さなくてはならない母親の辛い葛藤が描かれていた。
すごいと思ったところ
正直、すごいと思ったところはめちゃくちゃあった。
たとえば「人形の表情」ね。
本当の人間の母子の再会みたいに見えたもん。母親の葛藤の表情、恋しさから泣いてしまう子の表情。3人の黒子、語り手、演奏者たちによって魂がこもるんだろうな。
それから「人形の動きかた」。女性人形は細かな動かしかたで演じるらしい。おじいさんから教わってたのでわかったんだけど、「女性人形には足が物理的にない」のにあって、歩いたり膝を曲げたりするように見えるのだ。
3人の黒子が阿吽の呼吸で動かす。おじいさんいわく、全員が頭に物語からセリフまで入ってるらしい。たしかに把握できてなければ、感情や魂に訴えかける動きかたなんて出来ないよね。
本当の話、ボランティアのおじいさんに詳しく教えてもらったからこそ劇を楽しめたなって思う。
だから、十郎兵衛屋敷にいくときはボランティアの方がいる土日がいい。それに、生で人形浄瑠璃(劇)が見られるのも土日だけだしね。
土地勘、ナビがないとわかり辛いけど是非観てほしい。アンチ徳島の徳島県民としてもオススメ出来るね。
あと、痛恨のミスだったのは写真を撮るときは一眼レフ持っていかなかったこと。。。前から3列目で比較的前でさえ、この距離感。。。。
意外と皆、パシャパシャ撮ってたから、途中で「しまった~」と思いながら見てたもんね。。。
けど、不思議なもんで浄瑠璃を堪能したあとはあんまり人形に対して恐怖心を抱かなくなったな。気のせいかもしれないが。